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ROIC経営の再検証

前回コラムでは食品メーカのROIC経営を紹介した。今回はROIC経営の代表格であるエレクトロニクスメーカ大手を紹介する。当社はFA機器事業の失速で業績が低迷し、2024年3月期の連結純利益は前期比89%減の81億円。24年7月までに従業員数の7%に当たる約2000人を削減して固定費を圧縮する。業績低迷の主要因はFA事業。売上の2割を占める中国の大口顧客(EV用の電池メーカーや半導体メーカー)が景気減速を受けて設備投資を絞り込んだ。今後の事業戦略は高付加価値品と欧米市場への注力とのこと。
売上の2割を占める中国事業の低迷だけで前期比89%減は数字ロジックが難解である。また2000人削減であるがそもそも全事業に対して適正人員であったのか、7%の人的リソースを削減することで戦略を実行する組織力が維持できるのか懸念が残る。
前述の通り当社はROIC経営で有名である。縮小均衡の方向性ではROICを向上させるのは困難であり、且つCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)を短縮するためのSCM改革は人的リソースも重要である。現行のROIC向上の施策ツリーの再検証と組み直しが必要と考える。老舗メーカの早期のV字回復を見届けたい。

竹本 佳弘