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オーダースーツ小売企業、成長のKFS:SNS戦略

創業101年のオーダースーツ小売企業が2024年7月期、コロナ禍の落ち込みを超える過去最高の売上高(42億円)を達成。全国46店舗を展開、初回お試し1万9800円というお手頃価格でオーダースーツを提供する。その成長要因の1つがSNS戦略とのこと。当企業の社長はオーダースーツの耐久性と運動性を伝えようと、2013年からユーチューブで動画をアップ、例えば自社のスーツを着たまま登山をしたりスキージャンプをしたりするなど、数々の無謀な挑戦を続け、コアなファン約1万人がチャンネル登録している。SNS投稿ではキリマンジャロ登頂時には表示回数が20万超とのこと。
現在の平均客単価は4万円強、高価格帯の生地を増やしたことや、原材料費や加工賃の高騰(それぞれ1.5倍)を理由に値上げに踏み切ったことで、コロナ禍以前に比べ単価アップとなった模様。
コロナ前からもクールビズ、ビジカジ化の影響でスーツ、ネクタイは成長産業とは言い難い状況が続いている。その中での過去最高売上である。詳細分析は必要ではあるが増収要素は①アフターコロナでのスーツの新調②競合のパイの刈取り③クールビズ、ビジカジ化のなかスーツは少数保有のため、個質志向のオーダースーツの伸長、などがあると推察される。しかしながら本事例が示唆するのは老舗企業が多いスーツ業界において経営者自らSNSに取組み、個客と直接接点を持つ姿勢である。むしろリアル・サイバーの共存する現代において老舗商材こそ、SNSを活用していかに直接、伝えるかが肝要と考える。

竹本 佳弘