食品メーカ大手がROIC経営を重視している。その施策は大変示唆に富んでいるため紹介する。
●中期経営計画の廃止(2023年2月公表)
・数年先の目標に固執する中計病に陥らず、成長や資本効率に資する戦略を実践
・目前の数字の議論から、環境変化に応じて長期目標との差を埋めるための戦略の議論にシフト
・2030年を見据えた経営方針明示、あるべき姿は収益の額ではなく率で明示
●CCCの短縮→投下資本が小さくなりROIC向上につながる
・CCCは過去5年間100日前後で改善が頭打ち、棚卸し資産の回転日数が増加傾向
・世界食品大手10社のCCC中央値はゼロ、CCCマイナスは買掛支払前に売掛金回収、運転資金極小化
・当社はCCCの1日短縮が数十億円単位の資金効率向上となる
●低採算の冷凍食品の再編
・冷凍食品事業のROICは改善し4.4%、但し株主期待のWACC5%には未達
・米冷凍食品子会社はSKUを5年前より5割以上絞込み在庫削減、CCCは40日以下に改善
●サプライチェーン・ファイナンスを今夏に本格的に導入
SCFを活用し買掛支払の延期化で資金効率向上、棚卸し資産効率も改善可能
このようにKGIのROIC、KPIのCCC、SKU数xプロダクトポートフォリオ等を連動させたロジックツリーを経営層と事業部門が合意して施策遂行、モニタリングするのである。ファクタリングだけではなく、SCFの財務テクニックも活用して経営する当社の今後の業績に注視したい。