今回はOODAループについて解説します。初歩的な話なので、詳しい方には退屈な話かと思いますが、お付き合いください。
OODAループは人間であれば誰もが行なっている4つのプロセスである。そのステップとは、「観察(Objective)」「仮説構築(Orient):ビッグオー」「意思決定(Decide)」「実行(Act)」の4つである。「OODA」は、この4つのステップのイニシャルを取って名付けられており、「OODA」の読み方はウーダである。OODAループ理論は、朝鮮戦争の空中戦についての洞察を基盤にして、指揮官のあるべき意思決定プロセスを分かりやすく理論化したものである。朝鮮戦争では、アメリカ軍はF-86セイバー戦闘機、ソ連軍および中国軍はMiG-15戦闘機を主力として航空戦を戦った。F-86はMiG-15と比べると、加速・上昇・旋回性能のいずれでも劣っていたにもかかわらず、実際の交戦ではF-86のほうが優れた戦果を示し、最終的に、そのキル・レシオ(撃墜・被撃墜の率)はほぼ10対1にも達したといわれていた。ボイドは、自身も数度に渡ってF-86に搭乗しており、これらの経験をもとにして洞察した結果、決定的な勝因は、操縦士の意思決定速度の差にあったと結論づけた。F-86のコクピットは360度の視界が確保されており、MiG-15に比べると操縦も容易であったため、F-86のパイロットは敵機をより早く発見することができ、より早く対応する行動をとることができた。ボイドは、どんなに不利な状況からであっても、40秒あれば形勢を逆転できたということから「40秒ボイド」の異名を持っていた。そんな彼の強さの秘訣を一言でいうと、「行動に移す速さ」である。どんなに先の見えない状況の中でも迅速に意思決定を下し、迅速に行動に移す。これこそが、ボイドが40秒ボイドたる所以であった。ボイドは、軍を引退した後に人間の意思決定に関する研究に没頭し、その研究の末に作り上げたのがOODAループである。OODAループは、PDCAサイクルと同じように4つのステップに分かれている。ビッグオーの要素としては、文化的伝統(Cultural Traditions)、分析・総合(Analysis & Synthesis)、従来の経験(Previous Experiences)、新しい情報(New Information)、世襲資産(Genetic Heritage)が挙げられている。
次回は、PDCAとの比較を踏まえた具体的な話を紹介したいと思っています。
有冨 嘉哲
慶應義塾大学化学科・大学院理工学研究科卒業後、㈱富士通総研産業コンサルティング本部、㈱三菱総合研究所経営コンサルティング事業部にて経営、業務、ITのコンサルティングに従事。特に流通業の経営戦略、IT戦略に豊富な実績を有す。その後、起業を目指して現在、準備中。