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高齢化社会で求められる自治会運営の見直し

住民の高齢化により、運営に問題を抱える地方の自治会がある。自治会では自分たちの住む地域をより良くするべく、環境美化、防犯・交通安全、防災などの観点から様々な活動を行っている。しかし、日本の高齢化率が29%に上昇、特に人口5万人以下の地方都市では35%と割合が高く、私が知るところでは、住民の6割が70歳以上で構成される地域もあり、自治会運営が危惧される状態である。
自治会は主に住民から選定される役員により運営されているが、高齢化によりその担い手が不足しているのが原因だ。役員の主な仕事は、活動計画立案、会計管理、催し物の運営などだ。また、これらを協議する会議運営や、自治会員への案内など、情報伝達も含まれており、非常に負荷が高い。更にその伝達方法も、電話や紙に印刷したものを自宅まで届けるなど、アナログの運用が継続されており、役員の負担に拍車をかける。その為、高齢者だけでは運営が賄えない一方、働き盛りの若者は役員になることを拒否する状況である。
この問題を解決するには、これまでの自治会の運営方法を根本的に見直す必要があると考える。まずは、紙媒体による情報伝達を廃止することだ。自治会運営専用アプリ「MY自治会」では、電子回覧板の作成・閲覧が可能である。これを利用し大多数の住民にはアプリで一斉配信を、スマートフォンを持ち合わせていない住民に対しても、その住民間で共有するタブレット端末を準備するのも手段では無いだろうか。また、このアプリではオンラインでの自治会費の集金、アンケート作成が可能であり、これまで個別対応が求められたアナログ業務をデジタルで一斉実施することで大幅に効率化することができる。
他の案として、役員の役割を再定義して、誰でもできる部分(部外者でも)を外部委託することも手段だ。実際、会議資料作成、議事進行、議事録作成など、意思決定以外の部分を外部委託している自治会も存在する。自分たちの町の活動に直結する、企画・計画や、意思決定に関わるところは役員の役割として残し、事務局的な役割を外部委託することで、役員の負荷は少なく、自治会の機能を果たすこともできる。
これまで問題無く運営されていた経緯もあり、昔ながらの自治会運営が継続されているところが多いのではないだろうか。しかし、人々の生活様式、人口構成、IT進化など外部環境が大きく変化している今、自治会の良いところである「自分たちの町を良くする」は残し、「無駄な事務作業は効率化する」、企業でも求められる業務の見直しが、自治会運営にも求められている。

上田 彩寿香