TIC | 株式会社東京コンサルティング研究所

都市鉱山、新たなサプライチェーン・コミュニケーション

金属マテリアル大手は、貴金属などを含む電子基板の廃棄情報を世界規模で集約できるWEBシステムを21年12月に構築。金や銅などを取り出せる廃基板は都市鉱山と呼ばれる。各国廃基板回収業者をネットワークで結び、廃基板を迅速に確保する体制を整備するとのことだ。
当社は廃基板類の2割を取扱う世界最大級の製錬企業、取引先は数百社あり、回収業者はWEBシステムを介して引取依頼し、当社は見積回答する。
蓄積したデータは世界最大の都市鉱山ビッグデータとなり、廃基板は銅原料に混ぜて既存の製錬設備で再資源化するとのことだ。
現行取引では家族経営の回収業者も多く、サプライチェーン上のコミュニケーションはメールやファクスが主流。商談は現地回収業者を知る商社を通すのが一般的で、見積回答に1週間所要する場合もあるとのこと。
一方、今回のWEBシステムでは商社を介さず回収業者と直接つながる。チャット機能などで回収状況や回収依頼品種などの要望を迅速に伝えられる。データ蓄積により、サンプルの分析作業は不要で国や地域ごとの含有成分を予測し、処理を依頼された時点で生産計画に反映し、生産設備の効率的活用が可能とのことだ。
この事例はサプライチェーンの起点、生産者(回収業者)とのダイレクト・ダイアログ(直接対話)の仕組みである。利点として、1)最初から起点側に直接、欲しいもの(需要)を伝え、輸送途上も捕捉しつつ、調達できる。2)サプライチェーンの各企業が見えることで双方の信頼・安心感を醸成する。消費者が店頭で生産者の写真付きの産直野菜を購入する感覚である。3)将来的にステープルコイン等での即時決済を活用することでサプライチェーンの決済リードタイムは超短納期(資金繰りの安定)となる。新たなサプライチェーン・コミュニケーションによりヒト、モノ、カネの見えるマネジメントに展開するのである。

竹本 佳弘