TIC | 株式会社東京コンサルティング研究所

購買サイトのロケーションシフト

米国EC最大手がビジネスモデルの変革を迫られている。当社は1994年にオンライン書店として創業、日用品、生活家電、生鮮食料品等にラインロビングし、米国EC市場で42%のシェアを握る存在。しかし、韓国発SNSのECプラットフォーム(PF)を活用したインタレストコマース(ユーザーの動画視聴履歴に基づき興味のありそうな商品を推薦し、ライブ配信などを通じて消費者の購買意欲を刺激する手法)が台頭している。当PFを活用した化粧品メーカではスキンケア製品の紹介動画が400万回再生されたのをきっかけに米国で大ヒットした。当PFでは出品者に対しては送料や値引きの原資を負担すると説明し、米国EC最大手からの乗り換えを促す。

さらに中国発越境ECではアプリ上で割引クーポンを拡散する手法と中国からの少額輸入免税が奏功し、米国進出から1年で7000万人を超える月間利用者を獲得した。消費者の衝動買いを誘うKFSはウインドーショッピングや特売といった実店舗の戦略をアプリに取込んでいるということだ。

これまでの消費者が主体的にECサイトで検索し推薦も参考にしながら購買する形から紹介動画等を参考に購買する形にシフト、購買サイトのロケーションシフトが起こっている。昔の店頭でのカリスマ店員による実演販売のサイバー化である。従前の米国EC最大手のモデルに比して視聴覚に訴えるサイバー実演販売は強い。実効性を訴求する臨場感、販売量の見える売切れ切迫感、クーポン活用時の値頃感等、購買の意思決定プロセスが確立している。これまでの品ぞろえ・価格、即配等の競争優位性だけではECサイトは勝ち残れない示唆と捉える。今後も中国、韓国発のECプラットフォームに注視していきたい。

竹本 佳弘