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自由貿易協定に伴う貿易業務の変化

2020年11月15日、東アジアにおける地域包括的経済連携(RCEP)協定が締結された。
今後、ASEAN 署名国のうち、少なくとも 6 ヵ国と、ASEAN 以外の署名国(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド)のうち、3 ヵ国以上による国内批准手続き完了後、60 日後に発効する予定となっている。
日本にとっては、中国、韓国と初めて締結するFTAとなり、両国に対する輸出が更に拡大するとのこと。また、輸入貿易を行う企業にとってはプラスチック製品や衣類など、関税率の段階的低下、即時撤廃による恩恵が期待される。
一方で貿易事務に携わる者には、貿易事務が煩雑化することが懸念事項ではないだろうか。一般的に特恵関税率を用いた輸入通関には原産地証明が必要になる。これはRCEPでも同様の予定であり、仮に輸入通関時までにそれを準備できない場合は、本来適用可能な特恵関税率を用いず、高い関税を支払うことになるケースや、準備できるまで通関を遅らせるケースが想定される。
また、貿易事務作業も、必要書類が増えることで従来と比べ貿易事務に掛かる工数が増加するのではないだろうか。
その為、自由貿易協定による恩恵を効果的に享受するには、効率的に貿易事務を実行可能な体制を構築しなければならないが、企業側において貿易事務がシステム化されているところは少ない様に感じられる。
年間4,000本以上の取り扱いがある小売企業においても、エクセルによる入出荷管理やメールを駆使した出荷連絡、ドキュメント送付が実態だ。
システムの導入となると企業としてはハードルが高いが、最近では物流会社も貿易事務を補助するシステムを提供しており、輸送スケジュールの提供と併せて、パーチェスオーダー(PO)単位でのステータス管理やドキュメントの保管・共有機能を保有する仕組みもある。彼らの中にはシステム導入はあくまで荷主からの貨物受託を目的としたサービスの一環と位置付けており、システム会社と比較してシステム導入コストが廉価に提供してくれるかもしれない。
また、物流会社のシステムを使用するメリットとしては、物流会社は発地側でサプライヤーからの貨物出荷情報と、船舶スケジュールを保有しており、それら情報を個別に入手する必要がなくなることだ。貿易管理強化・業務効率化を検討する為に、現在取引のある物流会社に貿易管理システムに対する問い合わせをしてみてはどうだろうか。

民谷 成