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経営者能力のスキルマトリクス

日本企業で経営者の能力をまとめたスキルマトリクスの充実が課題となっている。2023年の開示内容の調査において日本の上場企業400社のうち、能力の定義まで示した企業は2割にとどまる、株主に対し経営陣の資質を説明する重要性は増加傾向とのことだ。スキルマトリックスは経営陣、取締役などの持つ能力や経験を一覧にしたもの。取締役の選任を諮る株主総会に向け、招集通知で記載される。
日本企業では97%(387社)が社長やCEOなどのスキルを公開、開示企業は米国の92%を上回る。一方、スキルの定義や選定理由まで説明する企業は米国で65%に達するのに対し、日本は21%にとどまるとのこと。
米国企業では経営陣に必要とされる能力を明確に定義し、職歴などに沿って説明する傾向が強い。経営陣に必要なスキルとして、グローバル経験やテクノロジーなど10項目をあげる。各項目がどのような能力、経験を指し、なぜ同社に必要なのかを説明し、技術、経営、実務の3段階に分け専門性を開示する等である。
日本企業はこれまで製造畑、財経畑等のキャリアパスや社内派閥で経営者に選任される場合も散見された。グローバル競争の中ではスキルマトリクス充実は不可欠である。ここで次の手順でスキルマトリクスを策定するのはどうだろうか。経営戦略の実践に必要な事業要件の設定→その事業を遂行するための人材スキル要件の設定→人材スキル要件を満たす人物像の設定→社内外でその人物像をイメージさせる人材の抽出→そのイメージさせる人材に成るための育成プランと育成(スキルマトリクス策定)→経営者に選定、である。経営戦略と経営陣との適合性(経営陣は戦略に従う)を担保するために、戦略から落し込んでスキルマトリクスを策定するのである。

竹本 佳弘