TIC | 株式会社東京コンサルティング研究所

物流×香り

CAPES社は物流の現場に香りを届ける「P@LLET FRAGRANCE」というサービスを実施している。サービス事例として、大手物流会社の倉庫内の休憩スペースや一般の方の庫内見学コースなどに、同社のディフューザーが設置されている。家庭用ディフューザーとは異なり、粒子が細かいため、空間全体が優しく香り、物流現場で懸念される貨物へのにおい移りが少ないことが特徴とのこと。このサービスを通して慢性的な人手不足が叫ばれる物流業界の就労環境の改善を目指している。
嗅覚で得た情報は人の感情、記憶を司る大脳の奥深くに直接届いており、感情に結び付いた記憶と密接な関係があると医学領域における様々な研究成果によって明らかになっている。私自身段ボールのにおいを嗅ぐと、倉庫で働いていた日々を思い出す。このように香りには人の感情や記憶に直接訴えかける力があるため、顧客のサービス体験価値を高めるのに有効ではないだろうか。
同社のサービスは物流の担い手向けに実施されているが、エンドユーザー向けのサービスを2点考えてみた。1点目は、香り付きの化粧箱に商品をギフト梱包するサービスはどうだろうか。例えば、ワインのギフト配送サービスで、化粧箱に木樽を思わせる香りを塗布する。外装箱から開梱した瞬間に、香りが広がり、ギフトを受け取った方はワイナリーから直接届いたかのような体験をすることができるのではないだろうか。2点目は、香り付きの配送リサイクルバックで、商品をお届けするサービスである。顧客はECサイトで商品購入時に、複数種類の中から好みの香りを選択、または香りマッチング診断からお勧めの香りを選択し、物流事業者がその香りを塗布した上で、商品をお届けする。商品を受け取った際に、好みの香りが漂い、自分好みにカスタマイズされた配送に特別感を得られ、楽しい記憶として残る。その後の返却プロセスを煩わしいと思う方いるだろうが、返却時に配送バックから漂う香りから、商品を受け取った際の楽しい記憶が蘇り、返却プロセスのネガティブな印象を少しでも和らげることができるのではないだろうか。
「香り」が人に与える感情や記憶への強い影響力を活かし、働く人々の環境改善やエンドユーザーに向けた新しい体験価値を創造することが可能である。単なるモノの移動を超えた「体験を運ぶ物流」の未来に注目していきたい。

上田 彩寿香