TIC | 株式会社東京コンサルティング研究所

物流不動産開発と物流オーケストレーション③

これまでコラム2連載で物流オーケストレーションを紹介した。最後の回では物流オーケストレーションの本質である「つなぎの技術」に言及する。
前回コラムで記載した通り、オーケストレータは多種の物流サービスを組合わせて、提供する。しかし、各種サービスを結合、導入するだけではインテグレータとの差異はない。オーケストレータは顧客の物流特性に応じて、多種のサービスをつなぎ合わせて、スループット最大化を実現するものである。
AI搭載した物流ロボティクスや自動搬送関連の機器等(以下、ハイテック)を導入する場合、そのハイテックが活躍する前後工程のヒト作業は、どうなっているだろうか。しっかりとつながっていない場合、例えばハイテック使用工程の前後に商品、ヒトの滞留が発生する。ハイテック工程の前に仮置きする、あるいはハイテックの仕様に合わせて準備作業が発生する等である。
ハイテック使用工程は仕様説明書通りの生産性が出るかもしれないが、前述の滞留、準備工数があるため、庫内作業全体のスループットは高くはない。
このためオーケストレータは、つなぎの技術が必要となる。ハイテック工程とヒト工程をしっかりとつなぎ、滞留無く、スループットを最大化するのである。
楽隊のオーケストレーションと同様、物流サービスの調和が必須である。調和によって顧客がハイテック導入時に社内稟議でコミットしたROIを達成するのである。
さらに、ハイテック導入時にオーケストレータは顧客と共同でつなぎの技術を磨き込み(稼働直後の混沌から運用定着に移行する)、その技術を次の導入機会に活かしていくのである。サービスの調和を通じて顧客との調和(長期取引関係)を実現するのである。

竹本 佳弘