米国の各都市は、アマゾンの第2の本社の誘致*1 に躍起になっている。雇用創出等の経済効果*2 を見据えていることが背景としてあることは自明である。しかし、なぜ日本の自治体と異なり、なぜここまで企業誘致に精力的になるのか。この差は、自治体予算のルールにおいての違いによるものである。米国では、バランスバジェット(Balance budget amendment)という条項がある。簡単に述べると、歳入の範囲内でしか歳出の予算を組めないというルールである。故に、アマゾンのような莫大な雇用と利益をもたらす企業を誘致できれば、更なる予算確保が可能となる。誘致に成功すれば、雇用増加に伴う、消費増加、ひいては自治体の収入増加が見込まれる。それにより自治体は、税制上のメリットを潤沢にさせ、更なる企業誘致が出来るという、正のスパイラルに持ち込むことが出来る。これは、国も自治体も赤字ありきで成り立ち、予算が取れなくても、死活問題に直結しない日本の自治体とは大きな差である。今後、日本の自治体は、民間企業にとって魅力的に映るよう励まなければならない一方で、企業側も事業継続の一策として自治体を選び、連携を検討するという、従来の官民連携とは逆のプロセスを行う必要性がある。実際に官民連携の裾野は広く、小規模事業者でも手がけられる事業も多数存在する。そのような官民連携によるプロジェクトの参画可能性評価や補助金に関するノウハウに関する相談は、TICのような専門家を活用することも一策である。
*1 現在、提案があった238都市から、20都市を候補地として選定した。現在の誘致候補は、以下の通りである。(1)アトランタ(ジョージア州)(2)オースティン(テキサス州)(3)ボストン(マサチューセッツ州)(4)シカゴ(イリノイ州)(5)コロンバス(オハイオ州)(6)ダラス(テキサス州)(7)デンバー(コロラド州)(8)インディアナポリス(インディアナ州)(9)ロサンゼルス(カリフォルニア州)(10)マイアミ(フロリダ州)(11)モンゴメリー郡(メリーランド州)(12)ナッシュビル(テネシー州)(13)ニューアーク(ニュージャージー州)(14)ニューヨーク市(ニューヨーク州)(15)北バージニア(バージニア州)(16)フィラデルフィア(ペンシルベニア州)(17)ピッツバーグ(同)(18)ローリー(ノースカロライナ州)(19)トロント(カナダ)(20)ワシントンDC
*2 Baltimore-based Sage Policy Groupは、メリーランド州が第2の本社の拠点として選定された場合、170億ドルと推定している(また、凡そ101,000の雇用が創出されると推定している