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少子化対策制度の利用促進にむけた企業風土づくり

この度、政府は、「異次元の少子化対策」の中で、子育て支援策としてテレワークや時短勤務を企業に求める案を提示した。仕事と子育てを両立させる方法としてテレワークや時短の制度自体は望ましいと考える。しかし、実態として、男性の16%しか育児休暇を取得できていない現状を鑑みると、制度だけを充実させるのではなく、取得しやすい環境づくりも併せて議論する必要があるのではないだろうか。

育児関連の制度利用が進まない要因の1つに、企業と社員の間にある期待値とパフォーマンスの関係にギャップが生じる点があると推測する。これまで仕事優先で企業や同僚からの期待に応えていた社員が、子育てを理由に会社を休む、周りに業務を引き継ぐなど、これまでの仕事に対する姿勢とは異なる行動を起こしたときに、期待値とパフォーマンスにギャップが生じるのだ。特に日本企業においては周囲との協調性が重要視される傾向にあり、実際の成果物の良否に関わらず、態度だけでパフォーマンスが低下している印象を与えることも有ると推測する。そこで、提案したいのが、働き方に応じて期待値をコントロールできる人事制度を導入することだ。具体的には、子育てによる生産性低下を想定した業務内容の見直しや目標値の再設定が可能で、且つ、その賃金規程が設定されている状態である。賃金が見直しされていれば、パフォーマンスが低下したとしても企業側の不満は小さく、また、それを原資に代替要員の確保をすることも可能だろう。利用者側も対価に見合うだけの業務を行えば良いと割り切りが可能となる考える。そして制度利用者の減収分を、国が子育て支援として全額補填するのだ。

補足として、この制度運用には、ジョブディスクリプションが明文化され、且つそれに報酬(考課)も連動しており、指標をもとに客観的に期待値をコントロールできる状態が構築されていることが望ましい。業務内容や責任範疇、目標値などが明らかにされており、それに応じた評価値も予め定まっている状態である。この状態が構築されていることは働き方に応じた人事評価を可能にするだけでなく、代替要員の迅速な確保にも有用であると考える。

少子化に対する直接的な制度だけでなく、社会全体の仕組みとして、働く人が子育てと仕事を両立させることが可能な環境構築を促す政策に今後注目したい。

民谷 成