EC市場の急成長に支えられ、ここ数年、大型物流施設の建設が相次いだ。しかし、ここ最近は物流施設バブルを懸念する声もささやかれ始めている。CBRE社が発表した2017年12月末時点の空室率(首都圏 大型物流施設)は4.9%と、同年9月より0.9%低下しており、空室率を見る限りはバブルの懸念は少ないように見える。しかし大型物流施設は2018年1Qに過去最高水準の供給が予定され、2Q以降も高水準の供給が続く見込みであり、物流施設の需給バランスは強い供給圧力が続く。対する物流施設の需要を見ると構造的な脆弱性の懸念がある。重量換算で見ると国内物流量は実は縮小傾向にあり、現在の物流施設需要はECの成長による宅配便取扱個数は増加に対応するためである。つまりEC市場の成長に頼っている構造である。そのためECの成長が鈍化した場合や、EC業者の淘汰・集約が起きた場合、需要が縮小し中途解約や新規テナントが集まらず空き倉庫の増加や物流REITの下落といった危険性をはらんでいる。また物流施設に求めるニーズも変化してきている。今まではECに求められる配送スピードに対応するため、高速道路IC付近の大規模用地であればテナントが集まった。しかし最近の物流施設における最重要ニーズは人材を集められるかであり、近隣に労働力の共有源となる人口規模を有しているか、バイト・パート人材が通いやすいエリアにあるかが重要となっている。このような市場ニーズの変化を見誤ると、需要の偏在や需給のミスマッチが発生する懸念もある。しかしながら当面、EC市場は高い成長を維持し施設需要も堅調な拡大が想定されるため、現在の状況は単純にバブルとは言い切れない。一方で、前述の懸念点が認識されつつあるため、今後はより慎重に建設可否を判断する流れとなり、建設ラッシュは落ち着く方向になると考えられる。
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大型物流施設の建設ラッシュはバブルなのか?
経営戦略
2018年03月08日