世界のフードテック市場規模は2020年に24兆円だったものが、50年には279兆円へ急拡大する見込みである。
その中身は、世界人口増加に伴う食糧不足に対する、培養肉や代替肉の普及などである。
しかしながら、植物などの別の素材で見た目や味を再現する代替肉は、いくつかの課題を抱えている。「天然の肉に比べて価格の高さ」、「栄養素の偏り」、そして何より「肉が持つ味や香りが再現できていない」ことである。
普及への最重要条件とも言える「美味しさ(肉の味や香り)の再現」には、まず本来の肉が持つ味や香り(ヒトの味覚や嗅覚)を解明することが欠かせない。
このうち味覚に関しては、代替肉の製造時に肉の旨味成分を塗布して再現する、植物にも肉の旨味と同様の成分を取り出すなどの技術が導入されており、次段階は嗅覚について再現することが求められる。
香りをセンサーでデータ化することで、香りと嗅覚の関係を解明できる。
その仕組みとして、集計したデータの中でも逸脱した数値を示したものを基準値として、その基準値を組み合わせることで目的の香りを再現している。
実例として数種類の調味料の香りをデータで取得し、その結果ナンプラーと料理酒と純水の香りが逸脱した数値を示していた。それを基準とし混合比率を変えることで醤油の香りを再現するといった実験が行われている。
この実例を応用し、焼いた肉の温度帯の違いで発生する香りをデータ化し、理想の肉の香りを再現できると推察する。