新型コロナが第5類に分類されて以降、オフィス勤務に方針転換している企業が多いのではないだろうか。実際に、テレワーク実施率が30%から15%程度に減少しているという調査もあり、オフィス回帰が進んでいると想定される。この背景には生産性の向上、マネジメントのしやすさ、コミュニケーションの取りやすさなど、いくつかの側面があるのだろうが、それらを阻害する可能性のある「自席で行うweb会議」には警鐘を鳴らしたい。
コロナ禍前と比較して、web会議の回数が増加したと感じている。筆者自身、顧客との打合せは殆どweb会議を用いており、これはオフィス勤務に戻った今でも継続している。他社も同様と見受けられ、自席からweb会議に参加する姿をよく目にする。ただ、その行動は、周囲の業務遂行に悪影響を与えかねない。コーネル大学の研究によると、「Halfalogue(Half + Dialogue)」と呼ばれる、会話の半分しか聞き取れない場合には、脳が無理やり残りの半分を補おうとする為、集中力が奪われるという事象が発生するとのこと。電車の中でも会話はOKなのに、電話での通話はマナー違反とされているのは、このストレスによりトラブルが生じ易いからだ。職場においても、短時間で要点だけ伝える電話ならまだしも、長時間のweb会議は職場環境を悪化させ、結果、作業生産性及び作業品質低下の要因になりかねない。
また、会議室を用意しているにも関わらず、意図的に自席から会議参加しているケースもあると聞く。相対によるコミュニケーション機会創出を狙いオフィス回帰を進めているにも関わらず、自席に留まっているのでは意味がない。会議中の意思疎通の向上はもちろんだが、会議後の自席に戻るまでの何気ない雑談に、大人数では話しにくい「本音トーク」がされることも想定され、その機会創出の為にも会議室を用いることが大切だ。
web会議により遠方の関係者にも容易にコミュニケーションが取れる便利さを知った今、web会議件数はコロナ禍前より増加した状態が通常になると想定される。この変化した仕事のやりかたに応じた、職場環境の構築(十分な数の打合せ場所もしくはweb会議用個人ブースの設置)や、職場ルールの設定(出社時は相対で打合せ・自席での会議は行わない)が必要と考える。