米アマゾン・ドット・コム(以下、アマゾン)は、これまで、「アマゾンブックス」や無人コンビ二の「アマゾンゴー」などのリアル店舗の展開に取り組んでいるが、「アマゾンブックス」は米国国内15店舗、「アマゾンゴー」はシアトルに1店舗とまだ数は少ない。従って、多くのECユーザーにとって、アマゾンの顧客接点はコールセンターであるという印象が強いといえるだろう。アマゾンは、さらなる顧客接点強化の一策として、「トレジャートラック」に力を入れ始めている。同サービスは、期間・数量限定のセール商品をユーザーに渡し販売が完了する、いわゆる移動式店舗である。ユーザーはアマゾンのアプリ経由で購入すれば、受取指定の場所に来るトラックでセール品を受取が出来るという仕組みだ。このような移動型店舗は、スマートフォンアプリと相性が良い。アマゾンは、アプリユーザーの近くにトレジャートラックが通る際に、セール商品をプッシュ通知で知らせてくれるといういわば、O2Oサービスを実装している。筆者は、同サービスの狙いの1つに単純接触効果*1を発生させ、アマゾンのさらなる認知度の向上に繋げるということがあると推察する。かつ、トレジャートラックの外観が鮮やか、かつ街中を動き回るという特徴が、消費者に「遭遇」というイベント感を与え、SNS映えによる拡散力を持つ広告塔として機能すると考える。米eMarketerの調査によると、2014年から2019年までの小売業の年平均成長率は、店舗の成長率が世界的に一桁台であるのに対し、eコマースの売上成長率はほぼ二桁となっている。しかしながら、今後、モバイル、WebなどのECといったチャネル単位で闇雲に最適化を図ればいいという訳ではなく、アマゾンのようにリアル店舗を含め全体を見通したカスタマージャーニーの設計がさらに問われてくる。このような最適なチャネル設計、それに伴うアクションプランの策定において、TICのような専門家を活用するのも一策である。
*1何度も繰り返して接触することにより、好感度や評価等が高まっていくという効果(別名ザイアンスの法則)