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「手ぶら観光」がオーバーツーリズムを解消する

訪日客の増加に伴い問題視されるオーバーツーリズムの解消に「手ぶら観光」の取組みが、一助となることが期待される。この取組みは、旅行者が大きな荷物を抱えながら観光する不便を解消するため、空港・駅・商業施設などで荷物の一時預かりに加え、目的地まで配送することで、旅行者の利便性向上はもちろん、公共交通機関の混雑緩和を目指すものだ。西武ホールディングスは、駅のスマートロッカーに預けられた荷物をホテルに配送する実証実験を開始。その他にも、ヤマト運輸は大阪・なんばに自動手荷物預け機を設置。国土交通省も「手ぶら観光」の共通ロゴマークを発行、また、設備投資に掛かる費用の補助金も整備するなど、官民ともに注力している。
 今後、更なる訪日客の利用拡大には、このサービスの信頼性を訪日客に認識される必要があると考える。海外で自身の大切な荷物を知らない業者に引き渡すのは抵抗感があるだろう。信頼できる業者を識別するのに、政府公認のロゴマークを付与するのは有効と考えるが、ロゴマークそのものを認知してもらうことも重要であり、その為には観光ガイドブックへの記載や、空港などでのより一層の宣伝活動が望まれる。また、トレーサビリティの向上も不可欠と考える。荷物の中には常用薬や、タブレット端末など急遽引取りたい物が含まれている場合や、旅行者自身の行先が変更される場合も想定される。その際には、スマホから荷物のリアルタイムトレースが可能で、且つ、行先変更もアプリを通じて実施できるなど、ITツールの整備も必要と考える。
「手ぶら観光」が当たり前となり、訪日客の利便性向上だけでなく、地元民が訪日客を不満なく受け入れる、国全体がおもてなしする観光大国の施策の1つになることを期待する。

民谷 成