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自販機3.0の潮流

稼ぎ時である猛暑の中、飲料メーカーもコロナ禍においては業績不振に直面している。業績不振の要因の1つが自販機の販売減とのことだ。日本自販機工業会の発表(2018年)では清涼飲料自販機は210万台と、1人当たりの普及率では世界一であり、2兆円市場といわれている。また自販機はメーカー側が価格や商品構成を決められるため利益率が高い。各社のアルコールを除いた飲料事業の営業利益の6~7割を占めるそうだ。このような中で民間シンクタンクの調査では、6月の主要メーカーの自販機経由の販売額は前年同月比で13%減。5月は37%減と過去最大の落ち幅とのことだ。
飲料メーカー大手では自販機事業の業績回復施策として、オフィス向けの自販機とスマホアプリを組み合わせ、従業員の生活習慣に合った飲料を勧めるサービスを開始している。いわゆる自販機3.0のサービスである。海外事例として、食品スーパーに生野菜サラダ製造機を設置し、個客に応じたサラダをカスタムメイドしている。海外においても、コロナ禍では、サラダバーが難しいため、サラダ製造機が活躍しているとのことだ。
このように、自販機が個客とつながり、そのときの個客ニーズに応じた商品を提供する。メーカー側ではニーズを解析してコンシューマー品の新商品開発に展開することもできる。一方、個客側ではアプリに自分の嗜好を登録しておけば、好みの商品を販売する自販機に近づいたときに、クーポン付きの通知が届くサービスも考えられる。将来的には自販機を介して個客接点が強くなる。食品メーカーが自販機メーカー、小売店等と提携して、自販機内でカスタムメイドの飲食料品を作るD2C事業を創出することも可能性となる。

竹本 佳弘