米国では、Ai(人工知能)によるレコメンドサービスを展開する企業が増えてきている。最も成功している企業の一つに、スティッチフィックス社がある。同社は、専属スタイリスト(約3,400人)とAiによるパーソナルスタイリングサービスを提供している。スタイリストとAiが、EC会員の入力情報(服のサイズや予算、趣味嗜好)、買い物/返却履歴データを基に会員に似合う5着をレコメンドする。その後、会員自身がその5着の中から気に入ったものは手元に残し、残りは返却できるというサービスである。一見、趣味/嗜好という会員データが存在するため、似合う服をレコメンドをするのは容易であるように推察できる。しかしながら、同社の強みは、既存ニーズを満たす提案力ではなく、「潜在的ニーズの発掘力」にある。例えば、好みの色=黒、スタイル=カジュアルと事前に入力をしていても手元には、色=青、スタイル=カジュアルフォーマルなどの服が届くことがある。則ち、専属スタイリストとAiが顧客がこれまで考えてもみないような服をレコメンドし、「新たな自分の発見」という顧客体験を生み出しているのである。実際に、同サービスのリピート率は8割を超えており、レコメンド精度が非常に高いことが伺える。このように、自社のファンを増やす(リピート率向上)のためには、選択する手間がかからなくなるという「便利さ」を訴求するのみならず、顧客にセレンディピティ(素敵な偶然)を体験してもらうということがカギとなる。TICは、IBMのAi (Watson)を擁するグループ企業と共にAiの新たな活用法を模索している。