TIC | 株式会社東京コンサルティング研究所

投資家も期待を寄せるモーダルシフト(ロジスティクス観点のESG)

モーダルシフト(注1)が、会社の株価へ影響を与える時代がきている。企業のESGが、投資家にとって重要な投資判断材料になり始めたからだ。ESGとはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)で、企業の環境や社会問題に対する対応を意味しており、近年投資家から注目を集めている。世界最大の上場石油・ガス企業であるエクソンモービルは、低炭素社会への取り組みについて、情報開示することを投資家に約束した。日本においても、東京海上ホールディングスが、昨年11月、二酸化炭素(CO2)の排出が少ない企業を投資対象としたファンドを立ち上げた。このように、投資と環境問題が深い関係であることが分かる。日本において、企業のモーダルシフトへの取り組みは、他社、異業種間での共同輸送の実現により活発化されている。イオンとサッポロホールディングスはそれぞれ、大分港-静岡港の航路を共同利用することで、トラックから船への輸送切り替えを実現した。大分港から静岡港へはイオンのプライベートブランド飲料を、静岡港から大分港へはサッポロの清涼飲料水を輸送している。大手小売りとメーカーとの間の異業種による共同利用だ。このような成功事例が増加することで、企業のモーダルシフトがいっそう進むと予想される。モーダルシフトは温暖化の原因とされるCO2の排出量削減を可能とする。トラックと比較し船舶輸送は1/5, 鉄道輸送に至ってはわずか1/9しか排出されない。企業のESGが投資家から注目されている現在、ロジスティクス(モーダルシフト)が株価(ESG)にインパクトを与える時代になっている。
(注1) トラックによる幹線貨物輸送を、大規模輸送である海運または鉄道輸送に転換すること。
民谷 成