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AIを有効活用するために必要なこと

最近、人工知能(AI)が注目を集めている理由は、いままで機械が苦手であった物事を認識するルールや法則を見つけ出すことが出来るようになり、より汎用的なAIに発展できるのではないかと期待されているからである。

人間は猫と犬の画像を見て、この画像は猫と認識することができる、しかしどのようなルールと法則で区別するか明確な定義づけは難しく、今まで機械に判別させることは困難であった。しかし『機械学習』と、それを発展させた『深層学習』により、機械がある物事を認識するルールや法則を見つけ出すことができるようになった。

機械学習とは大量のデータと着目するポイントを機会に与えることで、統計の回帰分析や分類などを基にある物事を認識する法則性やルールを見つけ出すことができるアルゴリズムである。深層学習は機械学習をさらに発展させたもので、人間の脳神経を模したニューラルネットワークにより強力なデータ分析と学習を行えるため、人間が着目するポイントを与えずとも機械が自ら着目するポイントを探し出せる。

両者の違いを画像認識を例に簡単に説明すると、機械学習においては様々な果物の画像に「リンゴ」「オレンジ」「ぶどう」などの名称を付けたデータと、「色」と「形」に注目しろという指示を与えると、名称を付けていない「りんご」の画像を与えた際に「りんご」と判別できるようになる。
対して深層学習は名称付きの画像データを与えると、果物を識別する法則性やルールを自ら見つけ出すことができる。

ただし既存データを用いて、統計手法により分析をしているため、全く新しい状況が発生した場合は精度が低下してしまう弱点がある。また深層学習により機械が導き出したルールや法則性は人間にとって理解が難しく、人間が修正・調整を行うことが難しいという問題も抱えている。

このような特性を考慮すると、機械学習は過去データから動向を分析できる定番商品の需要予測や在庫管理への応用が考えられる。また深層学習は明確な閾値がなく人間が経験則を基に判断している業務への応用が有効と考えられる。加えて機械が導き出したルールや法則性はブラックボックス化する懸念があるので、最後は人間がアウトプットの正誤を判断するフローを加えた方が良い。

例えば請求書確認など「A社でこの請求金額は多すぎる」など担当者の経験則で判断している業務は今まで自動化が難しかった。しかし深層学習を活用することで機械が過剰請求と疑われるデータの法則性を見つけ対象データを抽出することができる。そのうえで対象データが過剰請求かどうか人間が最終確認を行うフローとすることでAIが導き出したルールや法則性が理解できなくとも実務での利用が可能となる。

センセーショナルに騒がれているAIであるが、出来ることに限りはあるし弱点もある。しかし有効に活用すれば人間よりも圧倒的に高いアウトプットが期待できる。そのため大切なことはAIの強みと弱みを把握したうえで、どのように有効活用できるかを冷静に考えることである。