HBRの推薦書である「TIME TALENT ENERGY」には下記のように記載されている。企業の競争優位性につながる要素は「時間」「人材」「意欲」であり、優秀な人材を引き付け、適切に配置し、やる気を最大限に引き出す組織とマネジメントが不可欠である。指標に目新しさはないが、言われ続けている事実こそ、多くの企業が実践できていない証拠である。生産性が停滞している企業では違いを生み出す優秀な人材を部門ごと平等に配置する傾向が強く、一方で生産性の高い企業は優れた人材を一つに集め、組織変革をもたらす業務に集中させるといった傾向がある。後者は人材配置に工夫によって成果を上げている例である。国ごとに比較すると日本企業の組織生産力指数(※)は平均で92でグローバル平均の113を大きく下回るなど、潜在的生産力を発揮できる人員配置となっていないと見られる。働き方改革が叫ばれている日本において効果的な人員配置が具体的に実行できないのは、社内の人材育成方針と雇用慣習に原因があると考える。まず人材育成面では、優秀な人材を「ジョブローテーション」によって多様な部署で人脈と経験を積ませ、それから元の部署でのマネジメント職を経験させることが多い。事業部側も優秀な人材に抜けられると困るという思惑があるため、事業部から要職への転換のタイミングが遅く進まないのではと考える。2つ目としては終身雇用の昇進制度面で、上司が昇進しないことには優秀な人材も昇進ができない事例が多い。生産力向上はどの企業にも求められる課題であるが、経営層は経営戦略とリンクする人材の育成方針と組織運営の方針や制度の在り方について深く議論し、結論を出し、実行していくことが必要と考える。TICでは、経営戦略の立案・実行から戦略に合致した人材要件の定義や組織機能の設計、またそれを実現するチェンジマネジメントなど、人材面からの企業の生産力向上を支援している。
※組織生産力指数:ベイン・アンド・カンパニーが開発した指標で、企業がもつ潜在的生産能力を発揮しうる人材配置になっているか評価するもの。「企業組織の初期状態、つまり、生産的な労働に所定の時間の100%を振り向けられる社員が平均的な割合で存在する場合の生産力を100とする」