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ヘビ年はリスキリングの好機

今年の干支であるヘビは、脱皮を繰り返しながら成長する生物なのはご存知だろう。古い皮膚を捨てるのは成長のタイミングだけでなく、キズや汚れの修復、寄生虫を取り除くという健康維持の目的もあるとのこと。人間は大人になると目に見える形で成長することは無いが、近頃、「リスキリング」という言葉をよく耳にする。経済産業省によると「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義されている。25年度には政府もリスキリングに向けた支援を拡充すべく予算計上しており、労働者が資格取得の為に会社を休んで講座を受ける際や、また、フリーランスの方が、企業への就職に向けて学び直す際の休職期間中の生活費を支援する制度を新たに設ける。また、企業が労働者に対するリスキリングを行う際にも補助金が適用される。
では、自分自身を計画的に成長させるにはどうすれば良いだろうか。まず第一歩は自身のスキルや業務経験の棚卸からではないだろうか。その際には、「業務スキル」と、「ビジネススキル」の2つに分けて考えることを推奨したい。この場での「業務スキル」とは特定の業務を行うのに必要なスキルや、所属する組織のやり方を踏まえた知見・ノウハウとする。例えば営業マンであれば、「自社商品について原価構造を把握した見積書が作成可能である」や、「他社商品との機能比較ができ、メリット・ディメリットを明確に説明することが可能である」など、業務に必要な知識・スキルなど具体的なものだ。他方の、ビジネススキルとは、「コミュニケーション能力」、「提案力」、「タイムマネジメント力」など、どの業務を行う上でも必要とされる能力と定義したい。なぜこのように分類するかと言うと、成長に必要な要素がそれぞれ異なるからだ。ビジネススキルであれば、通常業務において意識的に行動することで次第に向上させることができるだろう。一方、業務スキルについては、自身からスキル獲得の機会を創出しなければ成長することは難しいと考える。もちろん書籍や講習を通じて習得することも可能であるだろうが、その時間創出させる為にも、またさらには、実務で活用できるレベルに習得するには、実際の業務経験を有することが望ましく、その為にも、周囲に自身が成長したい方向性を示し、その機会を積極的に獲得する必要があると考えるからだ。
また、棚卸の際に明文化させることで、自身がやりたい仕事に必要なスキルや知識で不足している事項を洗い出すことが可能となり、何を習得すべきか明らかになるだろう。そして、後日振り返った際には、自己成長が達成できたのか否かの基準ともなると考える。
ヘビの脱皮には、成長と健康維持の目的があるとのこと。今年を成長の機会とするとともに、過去の失敗(キズ)も成功体験で上書きさせることで自信となる一年になれば幸いだ。

民谷 成