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食品SMの淘汰・統合③ ー他の小売企業にみる生き残り策ー

これまで2回のコラムでは食品SM業界の生き残りとして淘汰・統合について言及した。今回はSM業界の生き残り策を考える上で示唆に富むディスカウント店大手(以下、当社)の経営者のコメントを紹介する。当社は35期連続増収増益を更新中、個店経営をベースに売上高では2兆円を超える。経営者コメントとして事業成長のKFSとして次の5点あげている。特に5点目は特出している。
1)パート・アルバイトの熱量の高さ
店員が生き生きと仕事を楽しんでいて、自己実現につながっているかどうかが、地域商圏で生きていくカギ。各自が地域消費者の代表であり経営層も現場の人たちに敬意を払い、権限も委譲して丁寧語で話す。➡存在を認め・信頼→権限委譲→熱量増加→売上拡大のスパイラルの定着である。
2)100万人商圏に分割・支社長をアサイン
支社長が予算配分に携わり、達成度などに応じランク付け、全国で勝ち抜くためには現場の士気向上が必須、どの支社も必死で組織に魂を入れる制度として機能している。➡エリアマネジャ制度より強力な地域国家的な競争・統制・報償→決裁権範囲の拡充による自由度拡充→より迅速・個性的な売り場の創出による売上拡大である。
3)プライシングの改革
顧客は価格を事細かく調べていなくて『安い』という主観で購入を決める。会社の利益を残しつつ、最も安く見える最高の価格を追求するために、値付けの専門職の養成を開始➡将来的にはAIの助言も参考にオンデマンドのダイナミックプライシングにより利益の極大化を狙うと推察する。
4)最後の価格決定者を顧客にゆだねる
専用アプリで顧客が購入した商品の評価を投稿できるレビュー機能を搭載。『買ったけど失敗した』、『高いから買わない』という声を全て、仕入れ先と真摯に享受する。価格の需要弾力性をいかに体感・実行するかが重要。➡消費者の声を反映→消費者のストアロイヤルティ醸成→集客力増加のスパイラルである。
5)業態変革:小売業は媒体に徹するべき
商品別レビューを顧客が理解して、購買決定ができる媒体としての存在価値を高めていく。未来の流通業は、そこにある。レビュー機能の情報をもとに商品を探せるリアル店舗になる。顧客は絶対に媒体機能がある店にいく。媒体機能は、消費者の発言の集大成なので、メーカーに対する発言力も強くなる。売り手と顧客の媒介であり、実質的には『顧客代行業』のような存在になる。➡当業種のあるべき姿と捉える。チェーンオペレーション型、フランチャイズ型であっても、地域密着型は意識している。その中で個店媒体機能をどのように定義してアクションプランを策定・実行するかが、生き残りのKFSと考える。

竹本 佳弘