農機メーカー大手は熟練技能者の視線に関するデータを技能伝承に活用する。2023年中にも、水道管向けの鉄管を造る工場で熟練者の視線の動きを可視化する。鉄管のどの部分をどのような順番や速さで確認しているかなど、これまで暗黙知だった視線の動きを可視化。技能マニュアルに、視線データを入れ込んだ作業動画を加え、若手育成に利用する。現在は約6カ月かかっている基本技能の習得期間を2~3カ月に短縮する狙い。工場の自動化を進めているが、鋼管の品質の最終確認と管内部の塗装を同時並行で作業するラインは自動化が難しいとのこと。
この事例はアナログ作業をITが巻き取り、作業を軽減、効率化を目指すという取組ではなく、熟練者のアナログ作業を是としてデジタル化する取組で、五感を形式知化するものである。例えば視覚(鉄管を見る箇所・状態)、聴覚(鉄管の最終加工時の微妙な音の違い)、触覚(VR手袋等で工具への力加減)、嗅覚(出来上がり時の匂い)等である。アナログ作業を競争優位性として定義し、暗黙知を形式知化して、技能伝承するのである。