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PBR1倍割れの考え方

東証は4月、PBRが1倍を下回る上場企業に対し、株価水準を引き上げるための具体策の開示を求めた。直近で1倍割れは約1800社、プライム市場とスタンダード市場に上場する企業の5割超にあたる。企業に資本コストや株価を意識した経営を定着させる狙いで、PBRが1倍を下回る場合には、要因分析、改善策の開示といった対応を求めるとのこと。これを受けて6月末の株主総会では各社、改善施策を提示する見込みである。

そもそも、2市場に上場する企業数が適正なのか、懸念があるがPBR向上の施策は事業シナジー x 投下資本効率で測る必要があると考える。PBRの分子である株価は、将来の企業成長に対する株主の期待評価である。このため、株主に対して将来の成長(新規事業、M&Aシナジー等)をロジカル且つ魅力的に伝える必要がある。一方、分母である1株当たりの純資産(BPS)は資産の有効活用が重要である。資本をどの程度、活用して利益を創出するか、である。その1指標としてROEの重要性が増す。東証の分析ではPBR1倍超の企業はROE8%を達成しているとのことだ。トレンドワードのPBRに注力するのではなく、従前からの指標であるROEを10%以上目指すことが肝要と考える。

竹本 佳弘